『グムリと』
昼下がりの酒場でグムリはエール、オフェーリアはオレンジジュースでまずは乾杯した。
「今日は俺の生涯64年で最良の日だ。
本当にありがとう」
おや、どうやら彼は同年代のようだ。
「素材を持ち込んだだけで大袈裟だね。
……結局、解体してオークションに出すのかな?」
「国内で幾つか依頼が出ていたらしい。
それと早くも話を聞きつけたレストランから肉を販売してくれと言ってきている。
魔導士ギルドもうるさくなっているようだ」
「そう、騒ぎが大きくなってしまったわね」
「そんなのはギルドの連中に任せておいたらいい。
俺たちはもう感動で震えている」
だがオフェーリアにとってはたかが“火竜”である。
「あれから、ちゃんとあんたに言われた通りアイテムボックスに入れた。
その前にきた鑑定人が目を剥いていたぞ」
「まぁ、ただの火竜だしね。
でも出しっぱなしは傷むのが早まるから、いい判断だよ」
「なぁ、あいつを獲ってきたのはどんなダンジョンなんだ?」
どうやらグムリの興味はそちらの方に広がったようだ。
「ん〜
それなりの歴史のあるダンジョンだったと思う。
その最下層まで行ったのだけど、火竜はその5層くらい前からだったかな?」
「ダンジョンを踏破したのか?!」
「一年くらいかかったけどね」
グムリは手にしたジョッキを傾け、一気にエールを流し込んだ。
そしてプハーと息を吐く。
「あんた凄いな!」
「その時護衛を依頼した冒険者が今の旦那様ってわけ」
「そりゃあいい」
新たにピッチャーから注いだエールで、また2人は乾杯した。




