『炭鉱都市ギルド長ヴェント』
炭鉱都市マゲンヌには冒険者ギルドが2ヵ所あって、その両方のギルド長を彼、ヴェントが兼任している。
今日はちょうど支所である坑道前のギルドにいたところに緊急の呼び出しを受けたのだ。
そしてその内容を聞いた時の衝撃は今まで対峙してきたどんな魔獣と比べても桁違いで、馬を飛ばしてここまでやって来た。
そこで彼を待ち受けていたのは骸と化した赤い竜と見た目少女にしか見えないエルフだった。
「お、お待たせしました」
見覚えのない椅子に座り、ティーカップを手にするさまは優雅そのもの。
金色の長い髪と紫の瞳、そして先端の尖った長い耳の彼女は、昔ヴェントが一度だけ会ったことのあるエルフと同じ雰囲気を持っていた。
「まずは……この2人にも言っていたのだけど、こちらの買取をお願いしたいの。いかがかしら」
「それは……
こちらとしては是非お願いしたいところですが、何分予算というものがございまして」
「別に値を吊り上げようとは思ってないわ。
適正な額で買い取ってもらえばそれでいいの」
売主は涼しい顔をしているが、後ろからの圧、特に解体人の頭であるグムリの視線が突き刺さる。
「さっさと買い取りを決めてアイテムボックスに入れた方がいいわよ。
これは無傷で……血液もそのままなの」
オフェーリアのこのひと推しでヴェントは買取を決めた。
だがその値が問題だった。
「私は暴利を貪りたいわけじゃない。
先ほど彼らにも説明していたのだけど、コレは依頼のための挨拶がわりに持ってきたの」
「依頼?」
ヴェントは訝しげだ。
どうやら“ワケあり”であることに気づいたようだ。
「ええ、人を探しているの」