『解体場3』
それなりに大柄なゲンの胸ぐらを小柄な男が締め上げている。
その目は血走り、口角には泡さえ見える。
「おい!買い取るよな!!
絶対、絶対買い取るよな?!」
「いや、これは俺の一存では……」
「馬鹿野郎!
この機会を逃したら、もう一生お目にかかれないような大層なもんだぞ!」
「それは俺も理解してますよ。
でもこんな高額な物、ギルド長を通さないと」
「すぐに呼んでこいっ!」
さすがに火竜一頭丸ごとは職員の一存で取り引きできるものではないようだ。
オフェーリアにとって火竜など騒ぐようなものではないが、唯人にとっては大騒動になってしまった。
特にここの解体場の長は興奮していて、頭の血管が切れてしまうのではないかと心配してしまう。
「う〜ん、待っている間お茶でもしようかしら」
いつも通りマイペースなオフェーリアは早速テーブルと椅子を出し、続いてティーセットを出す。
茶葉はオーソドックスなものを選び、慣れた手つきで紅茶を淹れた。
気分で角砂糖をひとつ入れる。
周りの男たちの視線がうるさいくらいだったが、オフェーリアは気にしない。
「なぁ、あんた。
どうしてうちであの火竜を売ろうと思った?」
「ん?
ちょっと依頼をしようと思ってね。
その手土産みたいなもの?
まぁタダではあげられないけどね」
優雅な所作で紅茶を飲む姿は違和感が半端ない。
「お待たせして申し訳ない」
おそらく出先から駆けつけたのだろう。
普段はきちんと撫でつけられているだろう髪が乱れている。
「こちらこそ急かせて悪かったわ。
私はフェリア、見た通りエルフよ」




