『解体場2』
「誰だ!誰がこいつを持ち込んだ!?」
突然駆け込んできた小柄な男が火竜を前にして固まり、そして大声で叫んだ。
そんな様子を見ていたオフェーリアは目をぱちくりさせて、恐る恐る手を挙げた。
「私よ」
ぐりんと音がするほど激しく振り返った小柄な男がオフェーリアを睨みつけた。
「おまえか!
こいつはいつ、どこで手に入れた?!」
「……もうかれこれ40年くらいに、ある国ダンジョンの深層で」
「あんた、エルフか」
そこでようやく相手がエルフだと気づいた男は、少し態度を軟化させることにしたようだ。
「すまない、興奮しちまって無作法をした」
「まぁ、いきなりこれを見せられたらそうなるわよね」
オフェーリアは肩をすくめて見せた。
「いや、しかし凄い!
見たところどこにも傷がない。
こいつはどうやって屠ったんだ?」
「窒息させたのよ。
そして異空間収納に入れて今まで持っていたわけ」
ちなみにオフェーリアの異空間収納には火竜だけでもあと50頭以上は収納されている。
「だから解体するにしても、なるべく早くアイテムボックスを用意したほうがいいわよ。
“血液”もそのままだから」
特に血液は劣化するのが早い。
それゆえに希少で高値で取引されるのだ。
「なっ!全部そのままなのか?!」
「だから最初からそう言ってるじゃないの」
放心状態だった周りの解体人たちがけたたましく動き始め、小柄な男は検分を始めている。
そんなところでオフェーリアは、まだ尻もちをついたままのゲンに改めて尋ねた。
「はっきりさせたいのだけど、これ買い取ってもらえるんですよね?」
解体用の大刀を手にした男から表情が抜け落ちた。




