『炭鉱都市の冒険者ギルド』
冒険者ギルドの独特の雰囲気に慣れているオフェーリアでも、その異質なものを見るような視線に居心地の悪さを感じていた。
「こんにちは」
それなりの人数の冒険者がいたが、ほとんどは何もせずたむろしているだけだ。なので職員の並ぶカウンターには所々空きがある。
オフェーリアは目が合って挨拶してきた男性職員の元に近づいていった。
「こんにちは。
私、ここは初めてなんですけど」
そう言ってギルドカードを差し出した。
受け取った男性職員は普段通り、記録を読み取る魔導具にカードを入れて、一瞬固まった。
そしてチラリとオフェーリアの顔を見て、カードを返す。
「本日はどのような御用件でしょうか?」
「素材の買取と……いくつか質問があるのでそれに答えられる方をお願いします」
「ではまず、買取希望の素材をここに置いて下さい」
職員はオフェーリアの“見た目”で小振りのトレーを差し出した。
カードを見て、オフェーリアの正体に気づいている職員も、まさか大物を出すとは思っていないのだろう。当然の判断だった。
「これの本体をお願いしたいのだけど……トレーにはのりそうも無いわね」
オフェーリアがトレーにのせたのは、濃い赤色をした火龍の鱗だ。
目だけが笑ったオフェーリアが彼だけに聞こえるようにそう囁くと、職員は出来るだけ平静に努めて立ち上がった。
「では、どうぞこちらへ」
炭鉱都市マゲンヌの冒険者ギルド中央支部の中堅職員ゲンは興奮のあまり、指先が震えるのを隠すことが出来なかった。




