『炭鉱都市へ』
「これは下手に手を出したら一般区の建物に被害が出るわね」
「そうですかね?今更だと思いますが」
部屋の窓から覗くといくつもの場所から煙が上がっている。
だがたとえ全焼しても地下の隠し部屋には被害が及ばないようになっているそうだ。
「では今は様子見をしている段階?」
行政区の方も自身の防御に力を注いでいるようだ。
「基本、我々が人対人の争いに手を貸すことはありません。これがスタンピードなど魔獣が絡んでいたら別ですがね」
それと、個人的には侵略戦争などにも出撃するかもしれないとアグジェントは言う。
「じゃあ任せていいかしら。
訪ねたいところがあるのよ」
【ツブネラアロン】のオークション出品者の名簿から、比較的近くの町に住居のある、おそらく元冒険者になっているだろう人物の元に向かっていた。
本来馬車や騎馬では5〜10日かかっただろうが、近隣の町への転移と飛行を組み合わせて、その日の間に到着することが出来た。
「ここが炭鉱都市マゲンヌね」
炭鉱都市と言えば以前は薄汚れた感じで荒んでいたが、今は良い魔導具が開発されて粉塵などはまったく感じられない小綺麗な町になっていた。
「何しろ30年くらい前の事みたいだし、もういないかもしれないわね」
まずはとりあえずの冒険者ギルドに向かう。
【ツブネラアロン】を手に入れることが出来る冒険者ならそれなりの実力者だろうとあたりをつけたのだ。
そうしてオフェーリアは冒険者ギルドの中に入ると、思ったよりも盛況な様子に目を見張った。
実はここでは坑道に出没する魔獣に年中悩まされていて、坑夫たちを守る専門の冒険者もいるほどなのだ。
そんななか、視線を集めながら、オフェーリアはカウンターへ向かった。




