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『【デラメントル】』

「この後はどこにいらっしゃるのですか?」


「下で鑑定をお願いするものを出して、それからまずは洋品店に行って〜雑貨屋と〜最後に食品を仕入れようかと、でも冬籠り中だから食品は少ないかな」


 食品は都に転移して買った方が良いかもしれない。


「フェリア様?

 肝心のお話、お忘れですよ」


 ジルに呆れたように言われて、オフェーリアは我に返った。


「ああ、そうでしたね。

 実は……」


 お気に入りの採取場所に近い山中から移動する事になった顛末を話して聞かせると、アーチボルトは静かに怒っている。


「ただ、あの採取場所を放棄するのは惜しいので、少し考えていることがあるのです。

 あそこはあの奥にもっといい穴場があるんですよ」


 それからひとしきり、希少種などの話で盛り上がって、ジルの実家での夕食の約束をして商業ギルドを後にした。



「そうそう【デラメントル】はどんな感じ?」


 もう十数年も前に、ジルの一族にその運営を任せた店は、オフェーリアが営んでいた時と同じように商売をしている、はずだ。

 限られた貴族家や富裕層を相手にした店は、今は取り扱う商品の調達だけオフェーリアが行っていた。


「そう言えば私もしばらく顔を出していませんでしたわ」


 馬車はオフェーリアの雑貨屋【デラメントル】に近づき、御者が声をかけてきた。


「フェリア様、奥様、何やら店の前が変です」


 基本、一般販売を行なっていないはずの店の前には、どう見ても富裕層には見えない娘たちが数人、後から店を出てくるものたちを待っているように見える。

 一旦通り過ぎるように言い、観察していると、皆【デラメントル】の名の入った小さな袋を持っていた。


「主人の商品を引き取りにきたわりには様子が変ね」


 ジルは馬車を目立たないところに止めさせ、近くにいた少女に駄賃を渡して話を聞きにやらせた。

 それで戻ってきた少女の話を聞いてオフェーリア共々仰天する。


「何ですって!?

【デラメントル】が一般に小売りをしているですって?」


 ジルの悲鳴のような声が馬車の中に響いた。

 片やオフェーリアの方は目を据わらせている。


「ジル、あそこを任せているのは誰だったかしらね」


 その声には怒りが篭められていた。


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