『プリンと【ぼくちゃん】とダグル』
デザートのプリンを食べてご機嫌な【ぼくちゃん】の横で、オフェーリアとマティアスはまったりと紅茶を飲んでいた。
「……明日は忙しくなりそうだな」
「そうね、明日こそ帰って来れないかもしれないわ」
大学院の敷地内でゲルを出すことが出来れば可能だが、暴動がどれほどの規模になるか計り知れないのだ。
「あまり無理するな」
「一応今も調べてもらっているんだけどね」
たとえ結界の外で騒乱が起きていても、マイペースな連中の巣窟である大学院だ。アグジェントはともかく、他の者は頼めば二つ返事で引き受けてくれた。
ひょっとすると彼らは今頃徹夜で図書館の本を漁っているかもしれない。
それと、アグジェントは魔力の消費がキツそうだったので魔力ポーションを差し入れようと思っている。
「キュキュー」
ようやく2人前のプリンを食べ終わった【ぼくちゃん】が、その視線をオフェーリアたちふたりに向けた。
その口の周りはカラメルでベタベタになっている。
「あ〜あ、ベタベタじゃないの。
ちゃんと拭かないとダメだよ。
……洗った方が早いかな」
ダグルが申し訳なさそうに首を垂れた。そして【ぼくちゃん】を軽々と抱えると洗面所に向かっていった。
「ダグル、いつも悪いわね」
「あいつを含めた小隊の連中に酒を差し入れておくよ」
「ええ、そうしてちょうだい」
おそらくダグルはこれからも【ぼくちゃん】の付き人のような存在になるであろうから。