『アグジェント2』
「さて、以前来た時はきちんと住み分けが出来ていたと思うけど……今はどうなのかしら?」
オフェーリアが言っているのは、領主や貴族などの支配者層が主に住む行政区、学識者などが住むここ学研区、一般市民や商人などが住む一般区、そして下級民が住む下町だが、実は蜂起した下級民は一般区を襲い飲み込もうとしていた。
「そんなに悪い状況なのですか?」
アグジェントの顔色が紙のように白くなっている。
「あなたに聞いたのが間違っていたわね。
まぁいいわ。
私はね、今日はここの【知識】を守りにきたの。
結界を張って暴徒からここを遮断します。
まだ少しは猶予があるけど学研区から出ているものは諦めなさい」
あくまでもオフェーリアが大切なのは最高学府をはじめとした、教育機関に蓄積された知識……本である。次点でアグジェントのような知識人だ。
「フェリア殿、そもそもこちらに来られた理由をお聞きしてもよろしいか?」
「ああ、そうね。それからね。
実は【ツブネラアロン】の花粉を探しているの。
なのでその情報を得られないかとここに来たのよ。
そしたら町の中に入れなくて外で待機していたんだけどね。
最初からこうして転移してくればよかったわ」
実はオフェーリアはこの地の冒険ギルドに訪問するつもりだった。
なので正規の入場にこだわっていたのだ。
「【ツブネラアロン】ですか……
残念ながら私は持っておりませんな」
「ええ、安易に手に入るとは思ってないわ。
生息地などの情報を得に来たのよ」
「なるほど」