『白身魚の甘味噌漬けとレアチーズタルト』
揚げ物のはずが大根おろしとポン酢のおかげで胃もたれせずにたいらげたあとは涼しげなゼリー寄せが出された。
「これは何の捻りもないトマトのゼリーよ。
あっさりしてるからスルッと入るわ」
オフェーリアの言葉通り、小さめのゼリーはあっという間にロバットの腹に収まった。
これもトマトの甘みと僅かな酸味、それと絶妙な加減のスパイスが新たなる食欲を誘う。
「では次はもうひとつのメインね」
ロバットの前には魚料理が供された。
ロバットはナイフとフォークを揃えて置いて、満足げな吐息を吐いた。
「この魚料理も初めて食べた味です。
淡白な白身魚のはずが甘みと旨味があって、夢中で食してしまいました」
「うふふ、それはよかったわ。
それもね、東の国の特別な調味料にタイの切り身を漬け込んだものなの。
調理は普通にグリルしただけよ?」
「なんと!そのように貴重なものを!」
ロバットは興奮気味だ。
「さて、最後はデザートね。
これは新作で私も初めてお客様に出すの。
『レアチーズタルト』と言う焼かないケーキなのよ」
飾りにいちじくのスライスがあしらわれたタルトは小型で、手でつまんで食べられるようになっている。
ロバットは恐る恐る齧ってみて、あとはゆっくりと咀嚼しながら味わっていた。
「……もういつお迎えが来ても思い残すことはありません」
じんわりと涙すら浮かべて言うロバットに、お代わりのタルトを差し出してオフェーリアは笑う。
「駄目よ〜
これからオークションの情報を流して貰わなきゃいけないのに。
それに新作の料理を食べてくれる人がいなくなったら困るわ」
この瞬間、ロバットは意地でも長生きしようと決心した。