『グラタン』
作り置きしていたベシャメルソースは茹でたてのショートパスタと合わされて、ひと抱えもある長方形の深皿に流し込まれる。
それを魔導オーブンに入れて、一応タイマーをセットした。
次に取り出したのはまだ具の入っていないポテトサラダだ。
オフェーリアはそこに輪切りにし、塩揉みしたきゅうりと刻んだハムと茹で玉子を加えた。
そこにもう一度塩胡椒をしてマヨネーズを足し混ぜ合わせる。
大ぶりのボウルいっぱいの具沢山ポテトサラダの出来上がりだ。
次は素揚げしたミートボールにトマトソースをかけたもの、付け合わせの野菜はたっぷりのベビーリーフと茹でたロマネスコ。
そして揚げたて熱々のまま異空間収納しておいたコカトリスのから揚げが山盛り、もう【ぼくちゃん】は喜びのあまり目をうるうるさせている。
ここでちょうどタイマーが鳴ってオーブンを見ると、グラタンがいい具合になっていた。
こちらも粉チーズを振りかけて出来上がりだ。
「ではいただきましょう」
飲み物は、オフェーリアと【ぼくちゃん】にはピッチャーにたっぷりの冷水、マティアスにはエールだ。
まずはグラタンを各自の皿に取り分けてやり、チーズが大好きな【ぼくちゃん】には粉チーズを追加する。
その後もひと通り【ぼくちゃん】には取り分けてやってオフェーリアも食べ始めた。
「このグラタン、いつもより美味く感じる……」
オフェーリアがパッと目を輝かせた。
「わかる?!
このソースを作る時に使ったミルクがね、いつもと違うの。
中大陸の小国の地方にある農村でね、小さな牧場をやってる一族がいて、昔行ったことがあってね。今回も近くを通りかかったから寄ってみたら大当たりでね。
品種改良が成功して、今までにないくらい濃厚なミルクが採れるようになったんだって!」
ベシャメルソースにプリプリのショートパスタ、それに粉チーズだけのシンプルなグラタンだがそれだけに濃厚さが際立つ一品だった。




