『エルフ』
『これは……』
預かったカードは、最近は滅多に見ない仕様のものだった。
『ずいぶんと古いものね。本当に本人なのかしら?』
カードを渡してよこしたのはフードを深く被った少女だ。
カードの詐称はたまにあるが、それはこの後行う魔導具の水晶を使えば簡単に見分けがつく。
中堅職員の彼女、マリアは商業ギルドの重要部門である【オークション部】への扉の前で、附属されている水晶にカードを差し込み、オフェーリアに手をかざすように言った。
「これでいいのかしら?」
魔導具はオフェーリアをカードの持ち主本人だと認め、扉を開錠する。
そしてマリアはオフェーリアを伴って扉の中に入っていった。
「ずいぶんとセキュリティが厳重になったのね。
以前来たときはこんなのじゃなくて、普通の扉だったわよ」
一体いつのことだろうとマリアは訝しんだ。
彼女はこの商業ギルドに就職して8年になるが、この扉のシステムはその当時でも導入されていて、それなりの年月経っていたはずだ。
「やはり扱う物品に価値のあるものが多いので。
どうぞ、こちらの応接室に……」
振り返ったマリアは言葉を続けることができなかった。
彼女の後ろにいたオフェーリアがフードを下ろし、その容貌を顕にしたのだ。
その、フードに収められていた金色の直毛、紫色の瞳。
何よりもその耳は長く、先端が尖っている。
「あら、エルフを見るのは初めて?」
目を丸くして固まっているマリアを見てオフェーリアは笑っている。
どうやらこの町をエルフ(本当は魔法族)が訪れるのはずいぶんと久々のようだ。
「はい、あの……失礼致しました」
「うふふ、いいのよ。
私たちはあまり里から出ないから。
……特に最近はね」
最近は髪で耳を隠すことが多かったオフェーリアだったが、わざと見せつけるようなことをして反応を見た。
結果、掴みは上々のようだ。




