『トマトサラダ』
「さて、次はお口をさっぱりさせましょう」
オフェーリアは大型のボウルにたっぷりと作られたサラダを取り出した。
プレーンなドレッシングを回し入れ、かき混ぜるとひとりひとりの皿にサーブしていく。
その盛り付けられたサラダを見て【ぼくちゃん】が目を輝かせている。
その眼差しは赤い野菜に釘付けだ。
「【ぼくちゃん】の大好きなトマトだよ!」
実はこのトマトだけでなくサラダに使われている野菜、きゅうり、アボカド、レースレタスなどすべてがこの季節にはあり得ないものだ。
オフェーリアの場合、旬の時期に大量に買い込んで異空間収納で保管してある。なのでいつでも食べられるのだ。
「キュッキュー、キュ」
【ぼくちゃん】の皿にトマトとアボカドを取り分けたのはダグルだ。
マティアスは汚れた口許をナプキンで拭いてやっている。
「【ぼくちゃん】はお野菜も好きでえらいね。
それなのにマティアスは……」
実はマティアス、野菜が苦手である。
元々竜人は野菜を好まない。そんなところは原初の種族である竜種の食性を引き継いでいた。
「うん、葉っぱはあまり好まないがトマトやこの濃厚な味のアボカドは食えるぞ」
そう言ったマティアスの皿に【ぼくちゃん】が自分のトマトとアボカドを足している。
そしてフォークに刺したトマトを差し出した。
実はああは言ったものの、出来れば食べたくないものである。
だが【ぼくちゃん】に差し出されてしまえば食べないと言うわけにはいかない。
「おっ、【ぼくちゃん】ありがとうな」
トマトに顔を近づけて、パクリと一口で食すると、【ぼくちゃん】は嬉しそうだ。