『チーズinハンバーグ』
魔導オーブンから取り出した天板にはジュージューと音を立て、ふっくらと膨らんで肉汁を滲ませているハンバーグが並んでいた。
そのハンバーグをヘラで掬い、新たな皿に2つずつ盛り付けると3人の前に出した。
「熱いので気をつけて。
【ぼくちゃん】のは食べやすく冷ましましょうね」
手をかざして【温度変化】を始めたオフェーリアだが、これは単純に【冷化】するのではなく、ちゃんと適温に変化させている。
調整も難しい魔法現象のはずが、料理を冷ますのに使うオフェーリアはしみじみ規格外なのだ。
しばし見つめていたマティアスが、まずナイフを入れた。
「おぉ、これはなんだ?!」
切り口から流れ出る、濃いめのクリーム色の物体。
マティアスだけでなく【ぼくちゃん】もダグルも目を丸くしている。
オフェーリアに視線で急かされて、マティアスはそのまま大きめの一片を口にした。
「これはチーズか……
なんて美味いんだ!」
「えへへ、そうでしょ。
さ、【ぼくちゃん】も食べてみて?」
目を輝かせて頷いた【ぼくちゃん】はマティアスと同じようにグサッとハンバーグにフォークを刺し、そのまま口に運んだ。
だが一個丸ごとが口に入るはずもない。
それでも3分の1ほどを齧り取ると、噛みきれなかったチーズがびろ〜んと伸びた。
横にいたダグルが器用に切ってやったが【ぼくちゃん】は幸せそうに咀嚼している。
「本当に美味い。
それにチーズをこんなふうに使うのを初めて知った」
「うん、ある町で開発された特殊なチーズを使っているの。
普通のチーズじゃこんなふうにはならないんだよ」
【温度変化】してない自分の皿のハンバーグをカトラリーを使って一口大に切り分け口にする。
濃厚なチーズの風味と溢れる肉汁、そしてそれらを邪魔しないシンプルなソースを味わって、オフェーリアはにんまりとした。




