『いわれのない襲撃』
「何でしょうか」
男を見上げる女性……少女はとてつもない美少女だった。
その彼女は、貴族でも滅多にお目にかかれない美しい金の髪と紫色の瞳をしている。
その肌は磁器のように白く滑らかで、唇は艶やかなピンク色。
そしてなによりも、その先端の尖った耳は彼女がエルフだと言うことを指し示している。
「まさか……」
「まさか、何?
そんなにエルフが珍しいかしら」
「あんたが“森の魔女”か?」
「ここではそんなふうに呼ばれているみたいね」
オフェーリアはいい加減焦れていた。
この突然自分の前に割り込んできた男は一体何をしたいのだろうか。
「魔女様、こちらの方のお話は私が伺っておきますので、どうぞ奥へ」
「待ってくれ!聞きたいことがあるんだ」
伸びてきた手がオフェーリアの腕を掴んだ。
オフェーリアにはそんな事をされる覚えがない。
なので瞬時に振り払ったのだが、相手の男もそれが気に触ったのだろう。
腰の短剣を鞘から抜き、オフェーリアに向かって斬りつけてきたのだ。
「!!」
見えない刃が短剣を弾く。
そして続いて、その刃が男の手に当たり、短剣が床に転がった。
呆然と見ているだけだった女性職員が我に返って短剣を手の届かないところまで蹴り飛ばし、他の職員が男に飛びかかってその場に押さえつけた。
男は何か喚き続けている。
「いきなり何なの?」
とっさに使ったエアカッターで事なきを得たが、ぐさりとやられていてもおかしくなかった。
なぜ、この男が逆上したのか、この商業ギルドにその理由を知るものはいなかったが、それはすぐに駆けつけてきた自警団の兵によって知る事になった。
「そう、昨夜のアレはそういう事だったの」
事の顛末を聞いたオフェーリアは気の毒だとは思ったが、どうしようもない。
「まさか人死にがあったとはね……」
「ええ、でもこれは完全に八つ当たりです。
魔女様はまったく関係ないのですから」
そうは言っても、当事者の男としては釈然としないのだろう。
「彼を連れて行くのは少し待って。
一度話してみたいの」
オフェーリアとしては、この後もつけ狙われるのはごめんだ。