『マティアスの決断』
「俺、しばらくここに居るわ」
「え?」
さすがのオフェーリアもびっくりしている。
さらに後ろのダグルは動揺を隠せない。
「ちょうど議会も閉会しているし、書類仕事しかないからどこでしても一緒だろう?
【ぼくちゃん】そばにいても大人しいし」
でもそんな事が認められるのだろうか?
いやしかし、王がここで執務をすると言えば、それが実行されるのだろうか。
「えーと、それでお願いできるなら私も安心できるけど……」
「【ぼくちゃん】をあちらに連れて行くのは時期尚早だと思うんだ」
よほど難しい話でない限り、オフェーリアたちの会話の内容を理解している【ぼくちゃん】の前で迂闊なことは言えない。
ここダンジョン村で【ぼくちゃん】のことを認めない兵士はいない。だが本島、さらに宮殿のものたちはどうだろうか。
国王夫妻のペットくらいに思っているならまだマシだ。
2人の入れ込み具合に眉をひそめるものもいるのだ。
そんなところに傷ついた【ぼくちゃん】を連れて行けるはずもない。
「フェリアも無理して不審に思われる行動はしないように。
ないとは思うが軟禁して云々……なんてこともあり得ないことではないからな」
そんなことをすればその者には破滅が待っている。特に魔法族は平気で国ごと滅ぼすだろう。
「うん、そうだね。わかった」
「さて、この話は終わりだ」
マティアスは人懐っこい笑みを浮かべ、オフェーリアと【ぼくちゃん】の2人をそれぞれ右腕と左腕で抱き上げた。
「俺、朝からほとんどまともに食ってないんだけど、夕食は何を食わせてくれるのかなぁ」
「今夜は【ぼくちゃん】の好物を作っていたのだけどマティアスの好物でもあるわね。
何か作り足すからちょっと待っててちょうだいね」
【ぼくちゃん】だけでなくマティアスもワクワクドキドキだ。