『マティアス、見参!』
プリンの食べすぎでいつもより遅い夕食の準備をしていたところ、俄かにゲルの外が騒がしくなった。
とっさに【ぼくちゃん】を庇ったオフェーリアの前で、ゲルの出入り口の布が撥ね上げられまさかの人物が現れた。
「【ぼくちゃん】!!
大丈夫か!?」
血相をかえて飛び込んできたのは、驚いたことにマティアスだ。
オフェーリアも彼のこの行動にびっくりしている。
「マティアス?
あなたいったいどうしたの?」
「フェリア?
よかった、戻っていてくれたのか……
特急飛竜便で【ぼくちゃん】の様子を聞いて、我慢できずに飛んできた」
オフェーリアがここにいることも聞いていなかったようだ。
飛竜から降りて一直線に来たのだろう。
多少、呼吸が乱れている。
お付きの者たちも置き去りに、ほぼ単騎で飛んできた竜人の王はオフェーリアと【ぼくちゃん】を同時に抱き込んだ。
「フェリア、何かトラブルがあったのか?」
「うん、今ビドーの入場門の前で止められているの。
元々の住民も入れないみたいで近隣の村なんかに割り振っているみたい。
私はすぐ近くで野営してるんだけどね。
正確なところはわからないけど、ちょっと時間がかかりそうだね」
団体行動をしていると【転移】して戻ってくる事ができない。
昨夜はもろにそれだったのだが、思った以上に【ぼくちゃん】が不安定だったので驚いていたところだった。
「戻ってくるという約束を守らなかった事が、見捨てられたと思ったのかもしれない。
ごめんね【ぼくちゃん】」
「キュ、キュ」
つぶらな瞳が涙で潤み、小さく「キュ、キュ」と鳴き続けるのを見て、ようやく呼び出されてやってきたダグルに何事か囁いたマティアス。
どうやら解決策を思いついたようだ。