『【ぼくちゃん】のブランチ』
「【ぼくちゃん】
この様子じゃ何も食べてないでしょう?
一緒にご飯を食べよう?」
「キュキュキュー」
それまでしがみついていた【ぼくちゃん】が身体を離し、目を輝かせて何度も何度も頷いている。
オフェーリアはゲルの中に簡易コンロと作業台を出し、ミルクと玉子と砂糖で卵液を作りパンを漬け込んだ。
「さーあ【ぼくちゃん】の好きなものをいっぱい作るよ。
スープはじゃがいものポタージュスープ、りんごのサラダとコーンのバター炒め。
ウインナーとスクランブルエッグに甘〜いフレンチトーストよ」
「キュキュー!」
【ぼくちゃん】は大喜びだ。
まず【洗浄】で手を浄め、ミセルの手を借りて椅子に座るとまずはポタージュスープが出される。
まだオフェーリアが調理の最中だったので、ミセルが介添えで付いた。
「キュッ、キュッー」
ボイルしたてのウインナーとふわふわのスクランブルエッグ、添えられているのはグリーンアスパラだ。この先端の芽の部分が【ぼくちゃん】の大好物なのだ。
機嫌良く食べ始めた【ぼくちゃん】にホッとしたオフェーリアは、ほどよく卵液を吸ったパンをたっぷりのバターで焼き始める。
ゲルの中は甘い匂いで満たされていった。
お腹がいっぱいになった【ぼくちゃん】は寝台で丸くなって眠っている。
前夜はほとんど眠っておらず、限界だったのだろう。
オフェーリアはそのすぐそばで夕食のハンバーグを捏ねている。
「上に目玉焼きをのせようか。
パイナップルはゆっくりバターで炒めて甘みを引き出したのが美味しいね。
中に溶けるチーズを入れてみようかな」
憂鬱なことは忘れて、ウキウキしながら調理をしていた。