『風雲急を告げる?』
「このスープは初めて食べますが、美味しいですね」
どうやらこの商人はトマトベースのミネストローネを初めて食べたようだ。
「どうもありがとう。
私、よく遠征するので、鍋にスープやシチューを作ってそのまま収納しておくの。
こういうときに便利でしょ?」
そう言えばソーセージも出していたなと今更ながらも思い出す。
そして貴重な収納魔法が食品保存庫として利用されていることに唖然とした。
翌朝、今日は無事に町に入るはずだったのだが、昼近くになっても列は進んでいない。
馬車に泊まったオフェーリアたちは乗り合い馬車の停留所の職員の口利きでこちらでの検問が受けられるようになったのだが、こちらは完全に門が閉じている。
「結局、何が起きてるのかしら?」
「詳細ははっきりしませんが、このビドーの町を混乱させるために多数の人物が入り込んでいるようです」
「それって……」
「はい、破壊工作を伴うものです」
「なるほど〜
そんなんじゃ、新たな人の流入は避けたいわね」
とんでもないときにやって来てしまったオフェーリアは何と運のないことだろう。
「そこで憲兵団からの提案なのですが、一度身元の確認などを行なってから近隣の村などで待機して頂けたらと」
「……何かめんどくさい」
昨夜は人目があって【ぼくちゃん】の元に転移する事が出来なかった。
どれほど寂しかった事だろう。泣いていたのではあるまいか……
是が非でも今日は戻らないといけないのだが。
「お嬢さん」
非難するような視線を向けてくる職員Aを無視して、オフェーリアはひとつの提案をすることになる。