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『出会い』

 短い葬送の言葉の後、火葬された兄は神父の好意で無縁墓地の片隅に葬ることを許された。

 元々彼ら兄弟には故郷と呼べる場所はなく、兄の安息の地はこの村となる。

 男(弟)はせめて気持ちだけでも寄付をするつもりで、彼らが運んでいた禁制ではないものを金に変えるため、商業ギルドを訪れていた。

 結論から言うと、彼の持ち込んだ雑貨や薬草類は高く売れた。


 男がギルドから教会に向かうため早足で歩いていたところ、視界の隅に違和感を感じて足を止めた。

 振り向いて見ると、真冬であっても町歩きするには大仰なローブに、前が見えないのではないかと思うほど深くフードをかぶった小柄な人物が歩いている。

 その人物の向かった先を見ていると、自分が今、出てきた商業ギルドに入って行くではないか。

 好奇心に駆られて元きた道を戻り、その人物の後を追ってギルドに入った男は、そこであの人物の名を聞いた。


「森の魔女殿、今日はどうなさいました?」


 頭を殴られたような衝撃を受けた男が目を見開いてその人物を見た。

 ここからは話の内容まで聞き取れないほどの小声だが、女性か子供のような声だ。

 そしてその声が至って普通の遣り取りをしている事に腹が立つ。

 もちろんそれが理不尽だということもわかっているのだが。


「では奥でお話を聞きましょうか」



 ローブの裾から、歩き出した事により見えたブーツの華奢さはその人物が女だと表している。


「魔女……魔女か」


 男は自分でも気づかないうちに魔女(オフェーリア)に近づいていた。

 そして彼女の動線に割り込み声を掛けた。


「なあ、あんた。ちょっといいか?」



 オフェーリアが久しぶりにやってきた村の商業ギルドで、ひとりの男に声をかけられた。

 不思議そうに見上げるオフェーリアの横で、ギルドの職員の女性が「あっ」と声をあげる。


「魔女様、どうぞこちらへ」


 職員の女性がオフェーリアの背中を押すようにして先を急がそうとした。

 だがそこに男が立ちはだかる。


「ちょっ、待ってくれ!」


 オフェーリアはそこでフードを外し、素顔を晒して男を睨めつけた。


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