『門前の乗り合い馬車2』
酒の場の与太話ですが。
と、前置きをして乗客A改め商人Aが話し始めた。
「その話題を取り上げた奴もまた聞きだと言っていたと思います。
確か、中大陸での珍妙な場所や珍品の話題の自慢大会のような……そんなときにそんな感じの花の名を聞いた気がします」
「ふむふむ、それで?
場所とかはわからないかな」
「申し訳ない。
俺も酒が入っていて、本当にはっきり覚えてないんですよ。
ただ、やたら珍しい名だったのと“氷の花”というワードで頭に残っていただけで」
「そう……
でもそれだけでも手掛かりになるわ。
どうもありがとう」
「いえ。
……そうだ。町の中に入ったら、その話していた奴と連絡が取れないかためしてみますよ。
運が良ければ捕まえて話が聞けるかもしれません」
「えっ!本当にいいの?!」
喜色を浮かべたオフェーリアも美しい。
商人Aは思わず鼻の下を伸ばしてしまった。
「お待たせしました」
オフェーリアと商人たちを馬車に乗せてから姿を消していた停留所の職員がいくつかの紙袋を持って戻ってきた。
「夕食なのにこんなものしか手配出来ず申し訳ございません。
今、広場前の区域は少々ゴタついてまして。
詳細は明日の朝にはご報告出来ると思いますが」
オフェーリアはその事があって、情報を持っていた商人Aから話を聞けたので、まったく不運だと思っていなかったのだ。
「あ〜
サンドイッチかぁ」
職員が帰って、早速紙袋を開けてみた商人Bが落胆の声をあげた。
外はもうすっかり日が暮れて、季節外れの寒気にオフェーリア以外のものが身体を震わせている。
「このままじゃ風邪をひいちゃうわよね」
異空間収納から、上に鍋などをかけられるタイプの魔導ストーブを取り出した。
魔力をほんの少し流して火を着けると、鍋を取り出して温め始めた。
蓋を開けてみると具沢山ミネストローネのようだ。




