『アムリタの素材』
都近郊で生産されたミルクは濃厚で、それを使って作られたミルク粥はとても美味しく出来上がった。
「はい【ぼくちゃん】あ〜ん」
匙にひと掬い、口に運ぶと最初【ぼくちゃん】は意味がわからなかったようだが、匙で唇をつつくと口を開けた。
ほどよく冷まされたパン粥が口内に流し込まれ、咀嚼する。
怪訝そうにしていた【ぼくちゃん】だが口にした瞬間目の色が変わった。
「キュー、キューキュー」
早速催促しているようだ。
何日も食事をしていなかった胃を労わるためのパン粥なのに、こんな勢いで食べていいのか心配になる。
そんな微笑ましいひとときを堪能していたマティアスが腰を上げた。
「じゃあそろそろ出立するな。
向こうで待っているから、言うことを聞いて早く快くなれ」
頭をポンポンと撫でてマティアスが出て行く。
【ぼくちゃん】は残った右手を振ってさよならをした。
【ぼくちゃん】の左腕を再生させるための希少なポーション【アムリタ】
その調薬にはまたまた希少な素材を必要とするのだが、オフェーリアにはそのうちのひとつ、【ツブネラアロン】の花粉のストックがなかった。
都の魔法具店や素材を扱う雑貨店をしらみ潰しに当たってみたが残念なことに在庫が無かった。
なのでオフェーリアは自身で採取することにしたのだ。
だがそれには困難も付き従う。
何しろ“花粉”という季節性のある素材だ。
オフェーリアはこの【ツブネラアロン】の採取をした事がないので、まずは生息地から調べなければならない。
ダイアナにも相談してみたが畑違いすぎて戸惑われただけだ。
そして『冒険者に依頼を出したらどうか』と提案されたが、花粉の状態のクオリティを求めるオフェーリアは却下した。
今は【ぼくちゃん】の様子を見ながら下調べの真っ最中だ。




