『実行』
金の髪、紫の瞳をしたその少女はとても美しかった。
そんな美少女が怒りの表情を浮かべていて凄みすら感じられる。
そしてその背後に控える男も相当な腕の持ち主だ。
「このダンジョンに入る前に注意を受けたはずよね?
それなのに【ぼくちゃん】に刃を向けたのは初めから“そういうつもり”だったのかしら」
常なら爆笑を誘うような【ぼくちゃん】というネーミングにも突っ込む事すら出来ない。
それよりもギリギリと頭が締め付けられ鼻血が溢れ出す。
その時リーダーの横で仲間の頭がポンと弾け、その血が降りかかってきた。
「ヒィ」
目の前でその瞬間を目撃した男は歴戦の勇者だったにもかかわらず失禁してしまっている。
リーダーを含めその場に残った4人の男は、自分たちを取り巻く“気”にその身体を震わせた。
「フェリア、どうするつもりだ?」
「もう二度とこんな事が起きないようにしなければね」
威圧はさらに強まり、話すこともままならない冒険者たちは自身の命乞いすらままならない。
「自分たちのした事がどんな事か、よーく思い知ってもらうわ」
オフェーリアの合図で兵士たちが散開する。
そして威圧が解かれた冒険者たちは一斉に駆け出した。
だが一瞬ののちには背後から襲ってきた風の刃に切り裂かれてしまう。
「あら、手元が狂って首が落ちちゃった。
しょうがないわね」
少し手加減を誤ったウインドカッターが、一番後ろを走っていた男の首を斬り飛ばした。
他のものは身体中に切り傷を作って血塗れになっている。
「私、治癒魔法はあまり得意ではないのよね」
生き残っている3名に【エリアヒール】がかけられ傷が塞がっていく。
見た目の出血ほど深い傷ではなかったので、初回はきれいに塞がった。
「??」
冒険者たちにその意図は理解できないようだが、兵士たちはこの先を思いやってゾッとした。




