『恐怖』
今この場に魔力を感じられるものがいたら、その濃厚な魔力に当てられていただろう。
だがほとんど魔力に縁のない冒険者でも、その異常さに気づいて不安になる。
「ちょっと、これはおかしいんじゃないか?」
彼らの周りの森の中ではガサガサと不審な音がして、同時に獣の唸り声も聞こえてきた。
「一体何が起きてるんだ?!」
そして冒険者たちが我が目を疑うことが起きる。
いきなり茂みから飛び出してきたフォレストウルフが彼らのすぐ側を、彼らを無視して走り去っていったのだ。
これはまともな状況ではない。
冒険者パーティーの6名は恐れ慄きながらあたりを見回した。
と、次の瞬間、いきなり現れたアシュラベアーが突っ込んできて、パーティーのひとりを吹き飛ばして通り過ぎて行った。
「メノン!!」
アシュラベアーに突き飛ばされた衝撃と、その勢いのまま木に激突した男は手足と首があらぬ方向に折れ曲がり、ほぼ即死の状態だった。
「メノン!くそッ!!」
そこらじゅうで魔獣の咆哮や地響きが聞こえて、さすがの冒険者も怯え始めたその時、膨大な魔力が圧となって彼らを襲った。
「う、ぐぅ」
圧に押され意図せずに跪いた冒険者パーティーの面々を竜人の兵たちが取り巻いていた。
「あら、もうすでにひとり減っているのね」
感情の籠らない、どうでもよいと言わんばかりのもの言いの女の声がした。
「そりゃあフェリア、こんなに魔力を垂れ流せば魔獣は恐怖で逃げ出すわな」
下草を踏みしめる重々しい足音が近づいてきた。




