『報復前夜』
「それで……
【ぼくちゃん】の様子はどうなのでしょうか?」
ダグルがおずおずと聞いてくる。
「ここでできる治療は終わったわ。
ただ出血が多くてね、増血剤を飲ませたのであとは血が増えるのを待つばかりね。
今はちょっと不安定で動かせないのよ」
オフェーリアはチラリと天幕の方を見た。
「会う?」
「はい。是非」
「ではついてらっしゃい」
オフェーリアとともにマティアスも立ち上がった。
その2人の後ろに従うように、ダグルは天幕の中に入っていった。
「【ぼくちゃん】」
「ようやく落ち着いて、上がりかけていた熱も平熱に下がったわ。
あとはよく寝て、よく食べることね。
……私はしばらく付き添うけど、よければ見舞ってあげてちょうだい」
「はい、ありがとうございます」
ダグルの目に光るものがあった。
「さて、次は不届き者の“討伐”ね」
オフェーリアにとって【ぼくちゃん】をこんな目に遭わせた冒険者たちは、すでに魔獣以下の認識だ。
「それは俺も参加していいかな」
「もちろん。
【ぼくちゃん】と同じ、いえそれ以上の目に遭ってもらいましょう」
オフェーリアが黒い笑みを浮かべている。
このような時のオフェーリアは好きにさせるに限ると、彼女のことを知り尽くしているマティアスは溜息した。
「そろそろ兵士の皆も飽きてきているでしょう。
兵糧攻めも効いてきているだろうし、魔法族の本気を観せて差し上げますわ」




