『ダグル2』
「おい、早くしろ!!」
犯人たちが脱兎の如く駆け出した。
そんななか、中々たどりつかない自分が不甲斐ない。
ようやく【ぼくちゃん】の元に着いたときにはすでに冒険者たちは去っていて、その後ろ姿がかろうじて目で追える程度だ。
兵士として対象に対して対峙する事をたたき込まれているダグルとしては彼らを追うべきだとわかっているのだが、それはどうしても出来なかった。
そう、彼ら兵士にとって【ぼくちゃん】は“仲間”なのだ。
「おい!しっかりしろ!!」
血塗れで横たわる【ぼくちゃん】に向かって、ダグルがまずしたことはポーチから取り出したポーションをかけることだった。
1本、2本、3本。
左腕は肩から切断され大出血を起こしている。身体の傷もかなりの深傷でポーションの効果が出ないでいた。
4本、5本。
「くっそう、もうポーションが残り少ない!
誰か、誰かいないか!!」
その時ちょうど近くにいてこの事件に気づいた小隊が、ダグルと【ぼくちゃん】のいる茂みに近づいていた。
「おい!どこだ?!」
「その声はメヒルか!
助かった!こっちだ」
手持ちのポーションの最後の1本、6本目を注ぎながら、ダグルは大声で叫んだ。
「【ぼくちゃん】がやられた!
ポーションが足らないんだ。
ありったけ頼む!」
すぐに小隊からひとりが抜けて、街道を今来た方向に向かって走り出していた。
「その後はありったけのポーションを集めてきて、ずっとかけ続けてきました。
傷が深いのでしょう、初級ポーションでは出血を止めるので精一杯でした」
「よく頑張ってくれたわね。
【ぼくちゃん】は連れて帰ってちゃんと治療するわ」
「はい、よろしくお願いします」