『ダンジョンからの帰還』
普通の冒険者なら最低でも丸一日はかかるだろう1〜3階層の踏破を、僅か2時間で行ったオフェーリアは若干眩しそうにダンジョンから出てきた。
「……こんなところでどうしたの?」
その正面にはどっしりと床几に座ったマティアスがこちらを見ている。
軽鎧を纏い、抜き身の剣を地面に突き刺しているその姿にオフェーリアは目を剥いた。
「フェリアが戻って来るのを待っていた。
どんな様子だ【ぼくちゃん】は」
「私が到着するまで看病してくれていた皆と投与した上級ポーションのおかげで今は安定している。……ねえ、連れて帰ろうと思うの」
「そうだな、傷が治ったとしても、ここには戻れまい」
何よりもオフェーリアが心配でたまらないだろう。
「まあ、まずは血の量が増えるまでここに置いて、その間に始末をつけるわ」
「犯人はまだ中にいるのか?」
「ええ、下に降りたらしいけど、上がって来れないように階層境を封鎖しているみたい」
「それはそれは」
マティアスがくつくつと嗤う。
これはダンジョン内でどさくさに紛れてしまうのだなと予想していた。
「ところで襲撃を目撃した兵士が休暇でこちらに上がって来ていると聞いたのだけど」
「目撃者がいるのか」
「少し離れていたらしいけど一部始終見ていたそうよ。
なので完全に犯人は特定されているの。
まったく……それなりのレベルの冒険者でもこれよ」
「今回の見せしめは厳しくせねばならない」




