『メダル』
『【ぼくちゃん】のメダル』
それは見た目、新種の魔獣である彼が誤って討伐されないように、竜王家の紋章を刻んだメダルを特製の胸鎧に埋め込んだものを装着させていた。
その胸鎧ごと見当たらない。
「それが……
おそらく犯人はあれを奪うために彼を襲ったものだと思っております。
目撃した兵は【ぼくちゃん】の救命を優先したためあとを追うことが出来なかったのですが、その姿は追跡されております。
……どうやら奴らはダンジョンを下に向かったようで、ほとぼりを覚ましてからここから出るつもりなのでしょう」
ギリリとオフェーリアの奥歯を噛み締める音が聞こえる。
彼女は良かれと思って【ぼくちゃん】にメダルを与えたが、それが間違っていたと言うのか。
「フェリア様、我々もこのままで済ませるつもりはありません。
奴らをここから上に上げる事は絶対にないと誓います」
「わかりました。
そちらに関してはあなたたちに任せます。
しばらく時がかかるかもしれませんが、兵糧攻めに近い状況にしてやりましょう」
ダンジョンの中では魔獣の肉という食糧があるため、完全な兵糧攻めとはならない。
だが水場は限られているので、オフェーリアのように魔法で水を精製できるか、大容量のアイテムバッグを保有していなければ早晩限界がくる。
「最後は私にヤらせてくれる?
……ギルドで尻尾を出してくれればいいけど、おそらく他所で換金しようとするだろうから。
私が始末します」
「御意」
「さあ【ぼくちゃん】
地上に連れて行ってあげる」
毛布に包まれた【ぼくちゃん】を軽々と抱き上げ、オフェーリアは【飛行】で上を目指した。




