『木材』
翌日からの作業はサクサクと進んだ。
なにしろオフェーリアが大木の伐採と収納をひとりでこなすのだ。
それも凄いスピードであっという間に。
兵士たちはその後始末、残った切り株を掘り返し取り除く作業に当たっていた。
「さすがに今日一日では無理ね。
ん〜 3日ぐらいはかかるかしらね」
オフェーリアは息も乱さずマイペースである。
だがその傍らにいるマティアスはなぜか嬉しそうだ。
「どうしたの?」
「フェリアとこうしていっしょに居れるのが、昔ダンジョンにもぐった時を思い出させて……」
今はもう気軽に出かけることのできない身分になってしまって、あの頃が懐かしいのだろう。
そして何よりも大きなのはオフェーリアの存在だ。
彼が王位についてからの孤独は筆舌に尽くし難く、オフェーリアを娶ることにどれほどの情熱をかけたことだろう。
「うん、あの時は楽しかったね。
でもこうしているのも中々だと思うよ?」
オフェーリアの手がそっとマティアスのそれに添えられる。
側から見ると砂を吐きそうになる甘々な状態だが、心得た兵たちは見て見ぬふりをした。
いくつかの島が集まってできた島国である竜人国は、小規模な島国の特性とも言う慢性的な木材不足に悩まされていた。
今回のダンジョン内での伐採はそれを補える僥倖でもあった。
今回伐採された木々は一旦オフェーリアの異空間収納に仕舞われ縦穴の外に運ばれる。
そしてすぐそばに作られた製材所で枝などを払われ、これから作られる町屋の素材となるのだ。




