『土産』
「ところで【ぼくちゃん】はどうしたの?」
「ああ、いっしょに来るように言ったんだが、森の奥に行ってしまった。
また夜遅くなったら来るかもしれないので兵たちには言ってあるが」
今回の任務に就いている兵士は皆【ぼくちゃん】の事を知っている。
彼が遭難していた兵たちを助けた事は、もちろん皆が知っていてそれなりの敬意を持って付き合っていた。
「夕食はちゃんととってあるのよ。
今回は菓子類もたくさん持ってきたし」
「いつも来るのは夜なんだ。
ここの騒ぎが収まったら姿を現すだろう」
そうしたら予想通り、夕食が終わり、片づけが済み、夜番を残して兵たちがテントに引き揚げた頃、以前菓子を入れて渡した袋を持って【ぼくちゃん】は現れた。
その、手にした袋はパンパンにふくれている。
「【ぼくちゃん】!
遅かったね。待ってたんだよ」
オフェーリアの姿を見つけて駆け寄ってきた【ぼくちゃん】は、その足元に座り込み、見上げた。
そして手にしていた袋をおずおずと差し出した。
「くれるの?」
頷く【ぼくちゃん】から袋を受け取り開けてみると、そこには食べられる木の実がぎっしりと詰まっている。
「わぁ!!これくれるの?
ありがとう【ぼくちゃん】!」
ザッと覗いてみたところ、この大陸では希少な松の実もある。
この実で作ったケーキはとても美味なのだ。
その味を覚えていたマティアスも笑顔になった。
「さあ【ぼくちゃん】こっちきて。
食事を出すから……その前に【洗浄】」
手掴みで食べる獣の手を【洗浄】で潔めてやる。
野生の獣である彼に清潔を求めるのは、オフェーリアの自己満足ではあるのだが。




