『食肉』
竜人国では乳製品が手に入りにくく一般的ではない。
これは牧畜が盛んではないため富裕層の嗜好品といった位置付けのためだ。
そんな乳製品を大盤振る舞いする。
チーズマカロニはチーズだけでなく生クリームもふんだんに使うのだ。
「ほら、味見してみる?」
チーズたっぷりのソースとマカロニを混ぜている兵士は“それ”に興味津々の様子だ。
オフェーリアは差し出された手にマカロニをふたつのせてやった。
彼はクンクンと匂いを嗅いで、ぱくりと口にした。その顔は驚きに満ちている。
「!!美味しいです!」
あとのふたりも味見して目を見開いている。
「これは……」
「初めての味です!」
「チーズはたまに料理に使うから食べたことがあるかもしれないけど、生クリームは初めてよね?
ミルクもシチューで使ってるけど、チーズマカロニはかなり濃厚よね」
これを主食としている民族がいるのが凄い。
「次は揚げ物したいと思います」
チーズマカロニは冷めないうちに異空間収納に入れて、代わりにあとは揚げるだけにまで下拵えを済ませたカツを出す。
「今日はビフカツよ。
以前、中大陸のダンジョンで狩ったミノタウロスなの」
ここは獣人の大陸なので結構気を使う。
何しろ本土ではミノタウロスが普通に国民として生活しているのだ。
そしてダンジョンの魔獣としてのミノタウロスもいるという、とてもややこしいことになっている。
「ぶっちゃけこういうのってどう思う?」
「フェリア様が思ってらっしゃるほど、それほど深刻に考えているものは少ないんじゃないかな?」
「さすがに街中で対象の種族を殺害して食べる、なんて事はないでしょうが、肉屋で売っている肉なら別に禁忌はないですよ。
オーク肉なんか人気の食材ですし。
でもまあ、自分と同じ種族の肉は避けてるかもしれませんね」
それを聞いたフェリアがぱあっと、花が咲いたように微笑んだ。




