『ひととき』
草原のど真ん中にゲルを出し、周りを結界石で囲んだ。
そこにテーブルと椅子を出し、ふたりでお茶をしていた。
「うふふ、さっきからいつものお客さんたちが騒々しいわね」
団体さんでやってくる彼らが、結界の透明な壁にぶち当たってそこらじゅうに小山ができている。
それもいつもの光景なのでオフェーリアたちはまるっと無視だ。
「このまま置いておいたら良い撒き餌?になるかもよ。
……ところで今夜は何を食べたい?」
簡易魔導コンロを出してベシャメルソース仕立てのクリームシチューを作った。
昔のようにマティアスも手伝って、楽しい時間を過ごしていた。
「ん〜
やっぱりフェリアの“から揚げ”はひと味違うな。
何度か作らせてみたが、この味は出せない」
「うふふ、そりゃあ味付けや油が違うもの。
肉だってこれはコカトリスだし!」
「おお、そうなのか!
コカトリスかぁ……久しぶりだ」
竜人国でコカトリスは手に入らない。
大陸で購入するしかないのだが、それでも流通している数が少なく、幻の食材と言われている。
「……窮屈な生活をしてたんだね」
オフェーリアが来てからは気にならなかったが、それまで自由な冒険者だった彼が追い詰められていった様は、本人も気づいていなかったようだがそれなりに辛いものがあっただろう。
「それでも今はフェリアが来てくれたから」
食事の支度の最中だが良い雰囲気になってきた時、ゲルの向こう側の結界に突撃してきた存在の起こした衝撃に、結界内すら揺れた。
「……せっかくいい感じだったのに邪魔したのは誰?」
オフェーリアの目が据わっている。




