『第四層』
「これって私は【探索】ができるから問題ないけど、5層に繋がる階段(でない場合もある)を探すのって骨が折れるよ」
眼前に広がる草原に【探索】できる者がいない場合、手当たり次第に動き回るしかなく、こんな浅層で躓くことになる。
「これって案内板でも出すべき?
……でもダンジョンって無作為に変化することもあるんだっけ。
しばらく様子見かなぁ」
「できれば道でも付けてやればよいが」
現在既存のダンジョンの黎明期のことを思うと、その苦労が偲ばれる。
だが、ある程度の階層まで整備しないと、このダンジョンの商業化は遠のいてしまう。
「それは問題ないと思うけど……」
その時、またこちらに向かう無数の痕跡を草むらの中に見た。
2人は目配せを交わし、魔獣が飛び出してくるのを待ち受けた。
「今度はトカゲちゃんね!」
飛び出してきたのはオフェーリアにとって初見の魔獣だ。
体長50cmほどの直立歩行するトカゲに似たそれは、地を這うように近づいてきて、飛びかかってくる。それも数匹同時にだ。
「マティアス!油断しないで!!」
「おう、そっちこそ!」
瞬時に距離をとった2人はそれぞれの得物、オフェーリアは魔法であるが、でトカゲ魔獣に対峙する。
「あれはアンファレスだ!」
「何?」
「この魔獣はアンファレスと言う!」
目にも留まらぬ剣裁きのマティアスが何事か喚いていたが、まさかそれが魔獣の名称だとは思わなかった。
相変わらず、少しズレたところのあるマティアスだが、変わっていなかったことが嬉しい。
「5、6、7、8、9、と。
このトカゲちゃんたちは持って帰ろう」
コボルトはほとんど放置だが、これは研究対象となる。なので途中から【真空】で屠っていた。




