『草原』
第一層から第三層まではそのまま洞窟タイプだったが、第四層からは趣が違う。
それこそダンジョンと言わんばかりに、どうなっているのか昼間のように明るくて、あたりはずっと草原だ。
「これは……
この階層はずっとこのままのようね」
地平線?まで続く草原、膝丈くらいの草が風に揺れている。
「ふうん、ここには結構な種類の薬草が混じって生えているみたい。
ちゃんと見極めて採取できたら、これはこれでいい収入になるかもね。
……駆け出しから下級になれるか、ってレベルかな」
「おい、何か来たぞ」
“それ”の姿は見えない。
だが草原の中、こちらに向かってくる跡が見えた。
「そうだね〜
それはマティアスにお任せしようかな」
「了解ー」
腰の長剣に手をかけたマティアスがゆっくりと鞘から抜いて“それ”を見つめている。
次の瞬間、飛びかかってきた“それ”はマティアスの剣で真っ二つになったが、それが合図となったように四方八方から“それ”と同種の魔獣が飛び出してきた。
「コボルトか!
フェリア、気をつけろ!こいつらは……」
【ウインドカッター】で次々と首を落としていくフェリアを見て、杞憂だったと自笑する。
マティアスも剣を握り直しコボルトを屠っていった。
「まあ、こんなところでしょう」
オフェーリアたちの周りにはコボルトの骸が山となっている。
身長80cmほどの小型の亜人系魔獣であるコボルトは、場所によっては獣人として人族と混じって暮らしている場合もあるのだ。
「いつも思うんだけど、こういうのってどうなのかしら」
そんなオフェーリアの呟きを拾ったマティアスが不思議そうに彼女を見ている。
「何だ?」
「だってさ、コボルトだってそうだけど、オークもオーガなんかも普通に一緒に暮らしてるでしょう?
特にこちらの獣人大陸では普通に亜人じゃないの。
なのにダンジョンでは魔獣として出現して、それを冒険者たちは平気で狩っている。
これって普通?」
「そうだな。
ずっと昔は魔獣だった俺たち獣人は、人族から見たら不可思議な存在かもしれないな」




