『縦穴 2』
マティアスとオフェーリアが2人でダンジョンに挑むことになり、後に残された兵士たちは早速階段の整備にかかる事になった。
数多くの魔獣が這い上がってきた跡は階段状に削られたところがあり、そこを利用して下に降りていく階段を作ることになる。
明日には本島から石工や大工が到着することになっていて、そうすれば本格的に階段作りが始まるだろう。
マティアスはオフェーリアと命綱で繋ぎ、そして後ろからしっかりと抱きすくめる。
そしてオフェーリアの【飛行】でゆっくりと縦穴を降りていった。
「今のところあたりに魔獣の気配はないわ。
でもダンジョンでは急に“湧く”から気をつけて」
「ああ、わかっている。
焦らずゆっくりと行こう」
マティアスは【ライト】で照らされた岩肌を観察していた。
それは少し艶のある、そこらにあるのと変わらない岩だ。
だがそれが普通でないのは、今まで何もなかった地面に突然穴が開いて覗いた岩なのだからだ。
「さすがに出来たてのダンジョンね。
こんな岩肌にもびっくりするくらい魔素が含まれているわ。
……なるほど。
もうすぐそこから魔獣が出てくるわよ」
オフェーリアがそう言った間なしに、岩肌からニュッとオーガの頭がつき出した。そのまま上半身が現れ下半身が続く。
そして器用に岩肌に取り付くと、オフェーリアたちの方に向かってきた。
「ほら、出た。
このままやっつけていいかしら?」
「ああ、任せる」
そうなるとあとは簡単だ。
オフェーリアが【血抜き】と言うだけで、命の灯を消したオーガが落下していく。
それを追いかけて、ほんの少し足に触るといつものように異空間収納に収納された。
「オーガは美味しくないけど素材になるパーツは多いからね。
皮も重宝されるし」
オークよりも臭みはないがいかんせん硬い。
「挽肉にしてハンバーグくらいかな」
だが竜人が歯応えのある肉を好むのを、オフェーリアは知らなかった。




