『縦穴』
婚姻の儀式を先延ばしにして、オフェーリアはマティアスと共に兵士の中でも精鋭の部隊を連れてダンジョン穴にやって来た。
「ふうん、ここの入り口は完全な縦穴なのね」
「ああ、冒険者のための施設は基本地上に作る事になる」
今もたまに上がってくるという魔獣に注意しながら【ライト】で縦穴の中を照らしている。
と同時に【飛行】しながら【探査】し、下に降りて行くための階段を取り付けるための場所を探っていた。
「底は結構深そう。
これ、ずっと縦穴ならちょっと厄介ね」
「フェリア、一度上がってこい!」
フワフワと、ゆっくりと降下しているオフェーリアに向かってマティアスが声をかける。
地上からはもうその姿は見えず、【ライト】の明かりが見えるのみ。
途中、魔獣の吠える声が聞こえてマティアスは肝を冷やしていた。
「ちょうどオークが上ってきたので、何となくルートが浮かんできたよ。
冒険者ならどうにか昇降できるんじゃないかな。
将来的には階段を付けた方がいいと思うけど」
「で、底は見えたのか?」
マティアスは少々おかんむりだ。
「まだだよ〜
これはアレだね。
石工を連れてきて踊り場みたいのを作った方がいいかも。
あとは滑車を使った昇降機も考えた方がいいね」
オフェーリアが地上に上がってくると兵士たちは監視のために常駐している兵と共に野営のための天幕を用意し、明日からの探索に備えて命綱の準備をしている。
「今日はもう時間が中途半端だから、明日朝イチで降りてみようか。
マティアス1人くらいなら【飛行】で一緒に降りられるよ」
オフェーリアに抱きついて行くのは、いささか考えるところがあるが背に腹はかえられない。
「もう少し穴の直径が広ければ飛竜で降りられるんだけど……現行では無理だね」
だが、まずはダンジョンの様子、魔獣の分布を探索しなければならない。




