『竜人国のこれから』
オフェーリアの慌てようにマティアスの口元が笑みの形に上がる。
あまりにもかわいそうなので早々に引きあげた彼は、そろそろ潮時かと思う。
竜人の国の王の住む宮殿は、王が執務をとる宮殿といわゆるプライベートの部分ははっきりわかれている。
オフェーリアが今滞在しているのはその客間であり、回廊で繋がった離宮のような所だ。
婚儀の後は最奥にある王の居住区で一緒に暮らすことになるようだが現状はこの通りだ。
「この国には冬はないのかしら」
マティアスが寒さに弱かった事を思い出して、ちょうど紅茶を淹れていたリリに聞いてみる。
彼がダンジョンの厳寒の中死にかけたのは、今になっては懐かしい思い出だ。
「一応ありますけど震えるほど寒くなることはほとんどありません。
私たちは寒さに弱いのでそんなことになったら動けなくなってしまいます」
「そうよね。
この島は温暖だからあなたたちの一族が住み着いたのかもしれないわね」
こんな辺鄙な島に追いやられるように、竜の末裔たちが集まり国になった。
人族はともかく、単独の獣人の国はここだけだっただろう。
ただ現在は主に人族がその数を増やしつつあるが。
「最近は子供が亡くなるのも少なくなりました。
私の村では私と同じ年に生まれた子が10人以上いたのですが、成人できたのは私ひとりだったんです」
末端の島民にはどうしてそうなったかわかっていないようだが、最近は人口も増えて国力も上がっているようだ。
先日のダンジョン由来の魔獣討伐で活躍した飛竜隊も、その活躍が素晴らしかった。
「これからもっとこの国は発展するわよ。
あのダンジョンを開発して冒険者を呼ぶの。
そうすればびっくりするほど経済が回るわ」




