『訪れ』
都から戻ってきたオフェーリアがウッドハウスから出ると、昨日王がここを訪れたことを聞かされた。
「あら〜やっちゃった?!」
「陛下も、先触れもなしに突然だったことを謝っておいででした。
あの、ウッドハウスのドアを何度もノックしましたのに、反応無しで……」
「調薬室にいると聞こえないことがあるの。
何か仰っていた?」
「ダンジョンの公開?について相談したいと仰せでした」
それを聞いてオフェーリアは意外に思った。
今までの王のイメージでは、彼はダンジョンについては無関心に見えていたのだ。
魔獣の討伐に関してもマティアスに丸投げで王の意思が見えてこない。
王を支えているだろう側近団の動向も見えないのだ。
それなのにオフェーリアには自由にさせている。
何か歪だ。
「拙かったわね。
次はいつお見えになるか、仰っていた?」
「いえ。
しかし近々にはいらっしゃるのではないでしょうか。
なので明日からは宮殿のお部屋にいらして下さいね」
そこは頷くしかなかったオフェーリアだった。
「よぉ!」
もう深夜と言ってよい時間、宮殿に賜ったオフェーリアの私室に現れたのはマティアスだ。
まったく悪びれもせずに王の妃(予定)の部屋に姿を現したのだが、これは非常に拙い状況だ。
「よぉ、ってあなた、一体ここがどこだかわかっているの?」
「フェリアの部屋だろう?
うん、いい感じに調えられてるな」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょう?
誰かに見られないうちに早く出て行って」
これが誰かに見咎められたら……ゾッとする。




