『第2段階』
相変わらずフェリアの魔法は凄かった……
マティアスの目の前で屠られていく魔獣の数は、文字通り桁が違う。
おそらく本当はその魔法を宣言することすら必要ないのだろう。
だが一応竜人たちが不用意に近づかないよう、気をつかってくれているのだ。
彼女が一言【血抜き】と言えば、周りで何十もの魔獣がバタバタと倒れていく。
それを【収納】しながら前進していくのだ。
今はいわゆる“ザコ”と言われる魔獣が多いので兵士たちがひと当てするのも必要でなく、その数はサクサクと減っていく……はずだ。
「このあたりから魔獣の種類が変わるよー!
今までのよりも強くなるので気をつけて!!」
先ほどまで主流だったゴブリンがほとんど姿を消し、代わりにはホブゴブリンが現れた。
そして雷魔法を使う雷狼はただの剣士である兵たちには相性の悪い相手だろう。
オフェーリアは意識して雷狼を狩っていったが、どうしても討ちもらしが出てしまう。
「雷撃だけは気をつけて!
『ウォーターカッター』」
それに対しては攻撃魔法を使って屠っていくが、どうしてもその雷撃を受ける兵士が出てしまう。
怪我を見越して各兵士にはそれなりの数のポーションを持たせているが、麻痺の状態異常が残ると厄介である。
「マティアス、一旦退かせて!
怪我人を診るわ」
気づくともう休憩無しで5刻近く戦っていた。
どちらにしても休憩しなければいかに竜人の兵士といえど、そのポテンシャルは保てない。
谷まで後退してきた兵士たちは、そのうち5人が麻痺の状態異常を起こしていたが、すぐに麻痺消しの薬を与えたので事なきを得た。
「どうだ?フェリア」
「こっちは問題なしよ。
でもそちらは……今日はもう休ませた方がいいわね」
そう言われた兵士たちは不満そうだったが、思ったよりもこのダンジョンは湧きが多い。
オフェーリアがそれを指摘して、この討伐は長丁場になると言うと彼らも大人しくなった。




