『オサラ島』
そっと頬に触れる感触にオフェーリアの意識は覚醒した。
一瞬、今自分が置かれている状況に混乱する。
そしてすぐに理解して、しっかりと周りを見回した。
「よく寝ていて躊躇したんだかな。
フェリア、オサラ島だ」
正面に見える島。それがオサラ島だ。
オフェーリアは意外にも、思ったよりも大きな島だと感じた。
島の周囲は手前には砂浜が多いようで、それなりに立派な船着場もある。
島全体の高低差は奥に向かうほどに高くなるようで、そちらは木々に覆われているようだ。
「ダンジョンはどちらに?」
「あの丘の向こうだ。
村との間に谷があって、それが島民への被害を最小限に抑えた。
今も湧きは収まっていないが一時に比べるとマシらしい。だが……」
「次の大規模な湧きでは魔獣のレベルが上がるわね。
これは心してかからないと被害者が出るわよ。
……マティアス、覚悟はできてる?
腕は鈍ってないわよね?」
「フェリア、俺はまだまだ現役だ!
侮っているのなら、泣かすぞ!!」
懐かしい軽口に思わず口角が上がる。
「うふふ、湧きたてのダンジョンなんて初めてだけど、片っ端から殺っちゃっていいのでしょ?」
マティアスは知っている。
オフェーリアは古竜すらもひと捻りなのだ。
今湧いているダンジョンの魔獣などものの数にも入らないのだろう。
「ああ、頼む」
「私あれから【広範囲殲滅魔法】もいくつか覚えたのよ。
でも素材や食用にできるお肉を傷つけたくないから、いつものように【血抜き】や【真空】でいこうかな」
「そのあたりはフェリアに任せる」
「うふふ、任されました」
カチャリと命綱が外される。
と、次の瞬間、オフェーリアは空に向かって飛び出していた。




