『マティアスとともに』
その機会はすぐに訪れた。
マティアスは飛竜を一晩休ませたのち、翌朝にはオサラ島にとんぼ返りするつもりだったようだ。
オフェーリアは急遽、都に転移してポーションをいくらかとその素材である薬草を手に入れられるだけ調達してきた。
もし足らない時は向こうでも調薬するつもりである。
「本当に付いてくるつもりか?
まあ、心配はしてないが」
そこは心配するところだろうとオフェーリアは思ったが、口に出さないでおく。
そしてマティアスをスルーするとローブのフードを目深にかぶった。
「ほら」
マティアスが自然な仕草で手を差し出してくる。
「なに?」
オフェーリアが意味がわからないでいると、マティアスがいきなり抱き上げにかかった。
「なっ、なにすんのよ!」
びっくりして身を後退ろうとしたがあっさりと抱き上げられてドンに乗せられてしまう。
「何ってこいつに乗らずにどうやって行くつもりだ?
まさか自分で飛んでいくつもりじゃないよな?」
図星だった。
「まあ、せっかく来てくれるんだし?
精一杯こき使うつもりだから今のうちに休んでおいてくれ。
どうせ昨夜は寝てないんだろう?
少しだけでも目を瞑っていたらどうだ?」
オフェーリアが鞍に固定されるとすぐにドンが羽ばたきを始めた。
周りでは新たに30ほどの飛竜がいて、各2人ずつ兵を乗せている。
そのうちの2頭は昨日ゴンドラを運んできた飛竜で、今日は怪我人の代わりに兵を積んでいた。
飛び立った飛竜の鞍上は程よい揺れで気持ちよい。
そこですぐにオフェーリアは眠りに誘われてしまって身体から力が抜けていく。
そんなオフェーリアの腰にそっとマティアスの手が添えられた。




