『治療終了』
「ふう、これで終わりね」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
島でなら腕を切られてもおかしくないほどの怪我を、ポーションをたった1本飲ませて、あとは怪我をした場所にかけるだけで跡形もなく治したこの少女が女神にも見える。
そんな島民はこれからも変わりなく働ける事を涙を流して喜んでいた。
「あなたも血がたくさん流れ出したからこの薬を飲んでおきなさい。
1日一錠、必ずお水でね」
リリに10錠渡すように言うとようやく終わった診察にひと息吐く。
そしてフラフラと宮殿の中に戻っていった。
「フェリア様、お疲れ様です」
ダルメリアが、すぐ飲めるように冷ましたハーブ茶を運んできてオフェーリアに渡した。
それはオフェーリアも知る、疲れをとる効果のあるハーブ茶だ。
その心遣いにホッとして思わずホロリとしてしまった。
「こんなんじゃダメね。
ひょっとしたらすぐに次が来るかもしれない。
今減った分、ポーションを補給しなければ」
「次はしばらく来ない。
オサラ島の島民は全員避難させて、今は船の上だ。
フェリア、何もかも君に任せてしまって済まなかったな」
「マティアス!
あなたも怪我してるじゃないの!」
革鎧で防御されていなかった腕に包帯が巻かれていて、それには血が滲んでいる。
どうやら彼は宮殿の奥にいる上司に報告に行っていたようで、今しがたそれが終わったようだ。
「うん?ああ、かすり傷だ。
こんなのは怪我のうちに入らないよ」
それでも目尻を吊り上げたオフェーリアの勢いに負けて、素直に治療を受けることにしたマティアスは、言われるままに椅子に腰を下ろした。
そうすると手早く包帯が取り去られ【ウォーター】で出した水で患部を洗われ、ポーションを一本かけると、あっという間に治療は終わる。
「この傷はどんな魔獣にやられたの?」
「やたら数の多い、中型の狼だな。
他の狼をやっつけている時に隙をついて飛びかかってきたんだ。
危うく避けたんだが爪でザクっとだな」
マティアスに【毒状態】の表示はない。
しかし念には念を入れて、ポーションを飲んでもらうことにした。
「ところでどんな様子なの?」




