『毒と骨折』
「上の人たちはその事を知ってるのかしら?」
「知ってるはずだ。
その方面の兵を下げたからな。
そうしたら奴らもそこからいなくなったんだ」
オフェーリアは簡易の調合キットを使って毒消しを調薬しながら考えていた。
「その魔獣はどんな姿をしていた?」
混乱していて今更ながら、魔獣の種類を特定しようとする。
すると近くにいた別の兵士が答えてくれた。
「あいつらは“猿”だ。
前に大陸で見た事がある!」
島にはいない“猿”系の魔獣。
オフェーリアはその正体にすぐに思い至った。
「毒猿っ。
それなら普通の毒消しに追加する素材があるわね」
異空間収納から取り出した鉱物のかけらを指で潰して、今まですり潰していた薬草に追加する。
「その魔獣はね、本来はそれほど強い毒は持ってないの。
でもね、群れで行動するという厄介な習性があるのよ」
おそらくだがその島にダンジョンができたことで魔獣が溢れているのだろうが、ダンジョン産の魔獣というのは本来のそれよりも強力な個体が多い事が多々ある。
「出来たわ。
そこのあなた、これをこの人に飲ませてあげて。
もうほとんど意識がないから、喉に詰まらせないように気をつけて」
ちょうどそばにいたウノスの部下にこの場を任せて、オフェーリアは次の患者に向かう。
次の患者は骨折をしているのだ。
先ほど【解析】した後、鎮痛剤を飲ませていた患者だ。
その彼の骨折は開放骨折に近く、その部位を正常な位置に戻してやらなければならない。
オフェーリアは【洗浄】で自分の手と患部を消毒してからいきなり患部(脛骨)を押し込んだ。
「ギャーー」
いくら鎮痛剤を与えられていたと言っても、この痛みに耐えられなかったようだ。
数人がかりで押さえつけていたのだが呆気なく気絶してしまった。
「大人しくなってちょうどいいわ。
リリ、赤紫のポーションを取ってちょうだい」
いわゆる【EXポーション】と呼ぶものだ。
開放骨折は化膿する事が怖いので一気に治すことにする。




