『治療の前に』
そうこうしているうちに海上に黒い点がいくつか見えてきた。
身体能力を強化しているオフェーリアには、それは一頭の巨大な飛竜とゴンドラを吊るした2頭の飛竜だと認識する。
「戻ってきたわ!
あのゴンドラの中はおそらく怪我人よ!
とりあえず毛布をたくさん持ってきて。
ここで診るわ!」
異空間収納から取り出したテーブルの上にポーション瓶の入った木箱を並べていく。
女官たちも部屋からテーブルを運び出してきて並べ出した。
「ありがとう。
ではポーションは色別に、水色、薄紫、赤紫、赤と並べてちょうだい」
女官たちに指図しながらオフェーリアはまだ木箱を取り出し続けている。
御殿医であるウノスでもこれほどの量のポーションは見たことがない。
彼は呆然としていたが、はたと気づいたように動き出した。
「フェリア様、我らにもご命令をお願いします」
「では、ポーションの説明をします。
水色のはポーションA、これはご存知ですね?」
竜人国ではポーションは貴重品だ。
これは大陸とは海で隔てられていることが大きな理由であってその距離が問題だった。
「ポーションAは今回は主に直接患部にかける方が多いでしょう。
もちろん同時に飲用もしてもらいます」
そう話している最中にも水色のポーション瓶が入った木箱が積み上げられていく。
「これから来る患者には使わないと思いますが、軽い擦り傷などにはこちらの【傷薬】の軟膏も使って下さい。
おそらくこの後に来る避難民には軽症の人も多いでしょうから。
話はポーションに戻りますが、水色以外は私が指図しますので!それに従って下さい。
さあ、来ましたよ」
すぐ頭上で黒い飛竜が滞空する中、2頭の飛竜が息を合わせてゴンドラを降ろしてくる。
それを地面に固定するために衛士たちが駆け寄っていった。
「さあ、怪我の状態を見て診察の順番を決めるわよ。
ダルメリア、お願い」
その様子をウノスが興味津々で見つめている。




