『甘味』
オフェーリアの淹れたお茶(紅茶)とともに出された菓子に、女官たちは身も心も蕩かされていた。
「甘い……」
ダルメリアさえも目を潤ませている。
オフェーリアは最初なので、プレーンなクッキーを提供したのだが、それでもこの状態だというかとは。
「教えて欲しいのだけど、ここでは甘味は珍しい?」
昨日、宮殿に到着した時に出されたお茶もハーブ茶の一種であったようで一切の甘みはなかった。
「はい、とても貴重です。
ただ果物は年中ありますし、甘さ自体は馴染みのあるものです。
でも砂糖は貴重ですし、菓子は滅多に」
「なら私が提供したら流行るかしら?」
「そうでございますね。
まずは宮殿から試されたら如何でしょうか」
「私たちがお茶会でお菓子を食べるのは自然な事ですものね」
これならたとえ王に知られたとしても苦言を呈されることはないだろう。
そしてゆくゆくは王ともお茶をともにするような穏やかな関係を結んでいきたいと思う。
そしてオフェーリアは思い出した。
もう何十年も前、ダンジョンでマティアスと過ごした日々の事を。
彼は菓子も好んで食べていたのだ。
「うふふ」
「どうなされました?」
「少し昔の事を思い出しただけよ」
オフェーリアにとってはとても懐かしい、だがもう二度と戻れない思い出だ。
「ところでお尋ねしたいのだけど、国王陛下が自らお出ましになるような事象とは何?
私に話せないならはっきり言って」
女官の中でも若い子たちは互いに顔を見合わせている。
それを見てダルメリアが口を開いた。




