『飛竜』
「飛竜を飼い慣らしたんだ」
素材や食用以外の、竜種のまさかの利用法である。
「まだここにいる18頭しか調教が済んでいないんだが、行く行くは飛行部隊が作れればいいと思っているんだ。
ただ飛竜を飼い慣らすのは試練以外の何ものでもなくてな」
マティアスが困ったような笑顔を浮かべ、そしてオフェーリアを抱き上げようとする。
「わわっ、何すんの!?
いいよ、私自分で飛んでいくから!」
「そんなこと言わずに。
一緒に寝た仲だろ?」
何ということを言うのだろう。
すぐそばに同僚たちもいて聞いているのだ、これがオフェーリアの夫となる王の耳に入ればタダでは済まない。
後退るオフェーリアは簡単にマティアスに捕獲され、担がれて飛竜に近づいていった。
するとホバリングしていた飛竜が地面に降りて羽をたたみ、乗りやすいように伏せの態勢をとってくれる。
「さあ、もう暴れるんじゃないぞ。
ドンが驚くからな」
どうやらこの飛竜の名はドンというらしい。
オフェーリアはまるで荷物のように抱えられて鞍上の人となった。
「さあ、行くぞ!」
一行すべてのものが飛竜に乗ったのを確かめると、マティアスはそう宣言した。
するとまずドンが羽ばたきを始め、そして飛び立った。
そのあとは各自続いてくる。
「ふおぉーっ、凄いよー」
自分で飛行するのとはまた違った感覚に、オフェーリアは目を瞠る。
そしてはしゃぐ彼女をマティアスは温かい目で見ていた。
「ほら、暴れると落ちるぞ」
一応命綱は付けている。
そして何よりもオフェーリアは自力で飛べるのだ。なので落ちてもいいと、率直に言うと一緒に飛びたいと思ってしまう。




