『3度目の……』
先方とオフェーリアの婚約は恙無く結ばれた。
この婚約期間の間、いつでも先方に向かうことができるのだがあちらはもう離宮を用意して待っているそうだ。
「準備がよいと言うか、何というか……」
「それだけあなたに惚れ込んでいるのでしょう?
一体どこであなたを知ったのかしらね」
陽西大陸にはそれなりの年月居住していた。
基本的にはバイショーの町に定住していたが、神殿のあったハズレの町をはじめ首都にも行ったことがある。
「ん〜
まぁ、決まったことだし割り切るしかないか。
……できればよい関係を築きたいわね」
何しろ今まで2回破談になったオフェーリアである。それも相手の浮気(向こうにとってはオフェーリアの方がお邪魔虫だったのだろう)が原因だった。
「そっちは大丈夫じゃないの?
だって向こうからのご指名なんでしょ?」
「そうみたいだけど」
「じゃあ心配いらないわね」
2人の間に暫し沈黙が続く。
そしてダイアナは、今妹の胸に去来するものは何だろうかと考えるのだった。
輿入れの日。
底無しの異空間収納を持つオフェーリアは、その身ひとつで先方の国に向かう。
陽西大陸の諸島部であるその国は獣人たちの住む大陸の中でも特別な場所で、ある獣人が住んでいた。
そこに向かうには転移で首都まで移動し、それから先は【飛行】して行くことになる。
どうやら迎えのための一行が首都まで来ているようだが、はっきり言って邪魔以外の何ものでもない。
ばっさりとスルーして飛び去ろうとしていたオフェーリアの腰を、がっしりと掴むものがいた。
『なんと無礼な!』
憤慨したオフェーリアが身体を捻って見上げると、近づくまで気配すら感じさせなかった男が微笑んだ。
「変わらないな、フェリア」
 




