『縁談』
「お相手はあなたを、あなた自身を望んでいるの。
魔法族だからとか、血筋に魔力が欲しいとかではない……そこはかなり熱心に情熱的に訴えてきたわ。
私は直接会ってはいませんが、人柄に問題はないそうよ。
だから少しでも考えてみてくれないかしら?
……命令するのは簡単だけど、そうしたくないわ」
狡いと思った。でもこれはマザーの愛情でもある。
「……わかりました」
しばらくの間の沈黙ののち、オフェーリアは承諾の返事をした。
マザーの心遣いを受けてここは快諾ではないにしても自分から承知したということにしなければならない。
「そう。よかったわ。
お相手はとても素敵な方だそうよ。
支度には充分な時と金子をかけてよくてよ。
あなたにはこの国の王女として輿入れしてもらいます」
マザーの目が笑っている。
「ところで私はどこに輿入れするのでしょう?」
「あら、話していなかったかしら。
嫁ぎ先のお国は現在あなたが居住している陽西大陸に属する諸島部です。
一年を通して温暖な気候だそうですよ」
マザーのその言葉を最後に、オフェーリアは御前を辞することにした。
そしてその足でダイアナの元に向かうと盛大に愚痴り始めた。
「はあ〜
いったい何なの?どういうつもり?
今更、また輿入れって、そりゃあまだ私は若いけど?」
オフェーリアの誕生から100年ほど、そのあとは男子が1人生まれているだけだ。
そしてその子はマザーの血統を持つものではない。
「もう決まったのでしょう?
ならもう気持ちを切り替えなさいよ。
……ねえ、どんな服を仕立てる?」
相変わらずダイアナは自身の欲望に忠実だ。




