『マザーの提案』
「緊急通信なんて何事ですか?」
呼び出されたのはマザーが普段暮らしている城、そこの秘書官を前に剣呑な顔を見せているオフェーリアだ。
「私も詳しいことは存じません。
この件自体、つい先日持ち上がったものなのです」
秘書官はそう言って一礼した。
「ではマザーの元に参ります」
オフェーリアにとって現在のマザーは姉妹でもあり叔母でもある。
だがこうして直接会うのは今まで数えるほどしかなかった。
「お召しにより参上致しました」
「遠いところから呼び出して悪かったね、オフェーリア。
どうぞ楽にして頂戴」
現マザーは母と違って気さくなようだ。
オフェーリアに座るように勧めると侍女に茶を持ってくるように言う。
そして目を輝かせて現在の暮らしを聞いてきた。
「そう、陽西大陸のことはあなたからの報告を読ませてもらっています。
色々興味深いことが多くて……今回あなたを呼び出したのもそのことに関係あるのです」
何か、奥歯にものが挟まったような言い方だ。
そんな現状に焦れたオフェーリアは単刀直入に切り出した。
「マザー、御用はなんでしょうか?
緊急通信を使ってまで呼び出されたのです……
ただ事ではないのでしょう?」
そう言ったオフェーリアを、マザーは溜息を吐いてから見つめた。
そして口を開く。
「あなたに縁談がきているの」
「……は?」
「いえ、わかっていてよ。
今まであなたは2回も義務を果たしてくれたわ。
その2回ともが破談になって申し訳ないと思っているの。
でも今度のお話はお相手の方がぜひにと仰って、実は数年前から打診されていたの」
オフェーリアはどう反応したらよいのかわからない。




