『薬師のお仕事』
「あら、今日はどうしました?」
オフェーリアは今バイショーの町の外れで薬師として暮らしている。
元々獣人たちの寿命はその種族によってまちまちで、おしなべて爬虫類系の獣人は長命だ。
その彼らにとってしてもオフェーリアの年のとりかたは特徴的で、古の妖精族だと噂するものもいる。
……この町に来て30年、そろそろ居づらくなってきていた。
「薬師様、この子の熱が下がらないのです」
オフェーリアの見た目とさほど変わらないような若い父親と母親が、3才ほどの男の子を抱いてやってきた。
すぐに診察用の部屋に招き入れると寝台に横たえて着物を弛めるように言う。
オフェーリアはその間に洗面器に消毒用の魔法水を満たし、手指を消毒した。
「うん、熱があるね。
坊や、お口を開けてちょうだい……そう、上手よ」
喉奥は赤く炎症を起こしているがそれほど酷く腫れてはいない。
咳もここに来てから一度もしていないので肺炎の恐れはなさそうだ。
でも一応呼吸音は確かめておく。
そしてこっそり【解析】してみるが、深刻な病気ではなさそうだ。
「大丈夫、流行り病じゃないよ。
この年頃はちょっとしたことで熱をだすの。
坊やは寝冷えしちゃったかな?
解熱剤と免疫力を上げる薬を処方するね」
ぐずらずに診察を受けたご褒美に坊やには水飴をプレゼントするとようやく笑顔を見せた。
「お薬も甘くしておくから、嫌がらずにちゃんと飲むのよ?」
そうして親子の目の前で薬を調合する。
ひとつひとつの薬剤を説明しながらの調合は患者の不安を取り除くひとつになっていた。
「飲み方はここに書いてある通りに。
食後1刻以内にね」
この場合のような大した処方ではない時は安価な薬代しか請求しない。
何しろオフェーリアはポーションの類で膨大な利益を得ているのだ。
 




